『はじき出された子どもたち――社会的養護児童と「家庭概念」の歴史社会学』
土屋敦著、勁草書房 4000円+税

社会的養護の分野の学者が書いたものでないところが新鮮な本だった。多くの社会的養護関係の論文(数百)を読んで、社会的養護の、時代のイデオロギーを読み解こうというのがこの本の狙い。

戦後間もなく、そして1960年から70年代に起こったこと、近年の動きの3期にわたって言及している。社会的養護の専門家でない分、論点はおおざっぱだが、時代のイデオロギーを知る新鮮さは他の本にはない。

戦後間もなくは浮浪児が多くいた時代。子どものためにと言うのではなく、子どもの犯す社会的犯罪をなくすために浮浪児狩りが行われる。子どもを1匹2匹と数えたのは有名だが、子どもの権利意識という面では弱かったと言っていい。児童相談所の前身が児童鑑別所と呼ばれていたことも初めて知った。浮浪児を非行、知恵遅れ、発達遅滞などに分ける都合があったという。鑑別と言うのはそう意味かとはじめて知った。

60年代70年代は要保護児童が少なくなって施設定員の縮小などが厚生省から提案されるが、それに対する反対運動がおこる。そういうなかで、親のいない子どもではなく、家庭からの保護(施設措置)の動きが出てくる。にわかにマスコミによってコインロッカーベービーなどが話題になっていく。

社会的養護関連の本では知ることのできない情報がクールに読みとかれる。それにしても、長い間要保護児童が4万人内外で推移しているのも不思議。社会は変化しているのに要保護児童数は変わらない。

家庭内からのいわば親子分離が施設の経営危機から出たとすれば、家庭再統合や分離しないで支援する仕組みが十分議論されないまま虐待などの今日的な問題に突入していったという本書の論点が鮮やかに見えてくる。(木ノ内)

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