『西の魔女が死んだ』

ある会合で「不登校」をテーマに話し合ったが、その時『西の魔女が死んだ』(梨木香歩 新潮文庫)もいいよ、と勧められたので、さっそく読んでみた。

「わたしはもう学校へは行かない。あそこは私に苦痛を与える場でしかないの」中1の主人公まいの言葉にママは観念して、まいはおばあちゃんのところに行くことになる。おばあちゃんは「まいと一緒に暮らせるのは喜びです」と受け入れる。ママは「生きていきにくいタイプの子よね」とパパと電話で話しているが、おばあちゃんは「感性の豊かな私の自慢の孫」と言う。子どもの受け入れに大きな違いがある。

そして、生活を共にしながら、おばあちゃんの知恵を吸収していく。たとえばにんにくをバラの間に植えておけば、バラに虫がつきにくくなるし、香りもよくなるんです、とおばあちゃんは言う。

おばあちゃんはイギリス人で、魔女の血をひいている。そして、魔女になるべく、まいも修業を始める。基礎トレーニングは体力の向上と規則正しい生活。

おばあちゃんは声をひそめて「この世には、悪魔がうようよしています。精神力の弱い人間を乗っ取ろうと、いつでも目を光らせている」。まいは心配するが「精神さえ鍛えれば大丈夫」とおばあちゃんは言う。そして一番大切なのは意思の力。自分で決めてやり遂げる力だという。

小説の終わりの方でまいはこんな夢を見る。「蟹になった夢なの。蟹の赤ちゃんのころは体も柔らかくて、居心地がいいんだけれど、だんだん大きくなると、身体もだんだん硬くなるの。そして体のいちばんまん中の核のところまで、硬くなりそうになって、ああ、もうだめだ、と思ったら、脱皮が始まったの。たぶん、以前、ざりがにを飼っていたときに見た、脱皮の影響だとおもうんだけれど」

人を疑うときのエネルギーの動きがひどく人を疲れさせることなども学んでいく。

新しい学校に通学を始めるにあたって、まいは「魔女の卵としての自分の秘かな修業の場にする」と決心する。(木ノ内)


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