戦前の松戸、矢切りの渡し付近にあった感化院が舞台になっているよ、と聞いて『お菓子放浪記』(西村滋著 講談社文庫)を読みました。映画にもなっているので、観た方もいるかも知れません。

これから読む人のためにはあらすじを紹介するのはよくないのでしょうが、主人公がそんなに悪いことをしたわけでもないのに、ミナシゴだと言うだけで(引き取り手がないので)感化院に入所し、さまざまな体験をします。養子縁組で感化院を出ることになりますが、それで幸せがやってくるわけではなく、戦争に突入し生きるのも難しい、食べ物にも困る経験をします。一言で言うなら、出会いと別れがあり、生きる勇気をもらえる不思議な本です。

ところでミナシゴという言葉は“身寄りのない子ども”ということで、差別的な言葉かと思っていましたが、身寄りのない子どもを村の人たちがみんなで育てていくことを言うらしいのです。村の子どもと“みなして”養育する。地域に強い絆のあった時代のなごりの言葉といえそうです(いまでもそうあってほしいものですが)。

松戸の矢切り周辺にあった感化院は、いま千葉県大原にある子山ホームの前身なのではないか、と思っています。(木ノ内)


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